カメロード

息子と父親の日常

DNAなのか環境なのか

 息子が4、5歳の頃、何か難しい問題に取り組むときに、舌を出して唇を舐め舐めしていて、驚いた。それはおじいさんが何かクロスワードなどに集中してるときにやる仕草とそっくりだったからだ。私はそんなことをしないがこれが隔世遺伝というものかと驚いた。

 DNA的な遺伝なのか環境なのかわからないが、息子が私に似ていることは多くある。

手の甲の指の付け根が凹んでいるところなんて、生まれた時からそっくりで驚いた。

私が昼ごはんに買ってきて食べ残したコロッケを学校から帰ってきて、すぐに見つけたり、冷蔵庫に入っているソーセージを勝手に調理して、食べるところなど食い意地が張っているところなんて私そっくりだ。そして、これは、おばあさんにもおじいさんにもそっくりなので三世代そっくりだ。若かりし、おばあさんは、かつて、ホテルのビュッフェランチで、食べ放題のパンをカバンに入れて持って帰ろうとしてウエイターに怒られたほど、食い意地が張っていた。おじいさんは一人一本のみたらし団子を二本食べて、おじいさんの長男に怒られていた。

 娘はまだ赤ちゃんなので、これから何が似てくるのかと思うと楽しみであり、怖くもあるが、笑顔がかわいい点は私そっくりだ。

 夫婦も似る。おじいさんとおばあさんは、若かりし頃も今もかいつも夫婦喧嘩していた。夫婦喧嘩というか、おばあさんからおじいさんへのちょっとした注意に無反応なおじいさんに対し、おばあさんの口調がだんだんエスカレートしていくという感じ。普段は平和主義のおじいさんは家庭の平和のために黙って堪えているが、たまにキレて爆発するといった感じだった。こんな夫婦は嫌だと子供ながらに思っていた私も、今、結局、同じような夫婦喧嘩をやっている。ただ私たちの場合、息子が「夫婦喧嘩やめなさい」「二人とも仲良くしなさい」といって止めてくれる。止めてくれる人がいないおじいさん、おばあさんは夫婦喧嘩は程々にして、仲良く生きていってくださいと私はただただ心の中で願う。(止めにいかへんのかい!)

 このように改めて考えてみると似ようと思っているわけでは無いのにDNAなのか環境なのか似てしまうのが親子というものだろう。逆に似るべき、おばあさんの社交的なところは残念なことに私は似ていない、ただ、息子には隔世遺伝しているようだ。

 また、おじいさんの男気的な部分というか、仲間のために立ち上がる勇気や責任感も、残念ながら、私は似ていない。おじいさんは一見おとなしい、控えめな人だと思うかもしれないがそうではない、誰もやりたがらない、町内の自治会長を二期も務めた。若かりし頃、親戚一同集まってボルドーという京都の高級フランス料理の店で食事会をしたことがある。ここの名物はコース料理の最後のデザートワゴン、8種類くらいのデザートの中から好きなものを数個選ぶことができる。通常多くても選ぶのは3個程度だろう。そのときおじいさんは「全種類お願いします」と言った。全種類食べれる嬉しさと、なんか欲張りな感じで恥ずかしい気持ちだった。ウエイターは驚くこともなく平然と、ケーキをこれ以上無い程うす〜くスライスして全種類を盛り合わせて、全員に配ってくれた。今思えば、あれも子供の誰かが「全種類食べたい」と言ったのを聞いて、みんなの気持ちを代表して恥ずかしさや世間の常識に恐れることもなく子供、家族、親戚のために「全種類お願いします」と言ってくれたのだ。そんな男気のあるおじいさんです。私は似ることはできなかったが、息子に隔世遺伝することを願っている。そして、今後、そんな状況があれば、弱虫で意気地のない世間の常識や恥ずかしさばかり考えてしまうお父さんに代わって、息子よ言ってくれ。「全種類お願いします」と。